当時の姿はそのまま!最新オフィスとして生まれ変わった「九段会館テラス」

課題を解決するまちづくりプロジェクトノート

DATE 2024.06.21

  • #九段会館テラス
  • #登録有形文化財建造物
  • #歴史的建造物再生
  • #新しい働き方

2023年10月1日に開業した「九段会館テラス」。鹿島建設と共同し、登録有形文化財建造物である旧九段会館を一部保存しながら建て替えた、当社として初の歴史的建造物再生プロジェクトです。
今回は創建当時の帝冠様式を最大限に活かした保存・復原部分と、IoTを活用した地上17階建てのオフィスの新築部分、そして地域に開けたウェルビーイングなフロアを写真とともにご紹介します。

PROFILE

伊藤 悠太

都市事業ユニット 開発企画本部
開発第一部 事業企画グループ※2023年3月時点

古い建物に新たな命を吹き込み「再生」

「九段会館テラス」は、東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事をはじめ多数の実績を持つ鹿島建設さんとパートナーシップを結び、新築の高層ビル部分と保存部分の融合、そして保存部分の再生に取り組みました。
外観だけを見栄え良く残すのではなく、内部も当時の内装や雰囲気を可能な限り保存・復原し、動態保存することを心掛けました。古い建築物を壊さずに「再生」することは、廃棄物を減らすという点でも環境に配慮した取り組みだと考えています。

ノスタルジーが最新技術でよみがえる1階エントランス

九段会館テラスの象徴ともいえるエントランスは、旧九段会館の「帝冠様式」を残しながら当時の形状が復原されています。外装のスクラッチタイルは全て当時のものを再利用し、剥がれ落ちないよう一枚ずつピンで壁とつなぐアンカーピンニング工法で固定されています。

柱の石は当時の石材を再利用
床材や照明なども当時の意匠を復原
床の仕上げもレトロモダンな雰囲気に
木製扉は解体前の塗装をはがしチーク材をあらわに

エントランスホールを抜けると、そこには大空間のプラザが広がります。
プラザ内のファミリーマートとタリーズコーヒーの外壁(内装)には、解体時に回収されたスクラッチタイルが使用され、新築棟でありながらも時代を感じさせるデザインです。
さらに、プラザ西側に続く斜めのカーテンウォール、「View Smart Glass」をオフィスとして国内初導入。太陽の位置や天候に合わせて透過率を自動調整し、室内に入る自然光・熱量の最適化が可能です。ブラインドレスに日光を防ぎ、眺望を確保しつつ省エネ性能を向上させることができます。

View Smart Glass
重厚感のある仕様のファミリーマート

当時の壮麗さモダンな雰囲気を残す保存・復原フロア

保存・復原フロアには、ゲストルーム雅&葵、クラシックオフィス、真珠の間があります。

オフィス内とは思えない趣のある保存棟の階段

かつて応接室や役員室として使用されたゲストルームの「雅」と「葵」は、当時の雰囲気が忠実に再現されています。
株式会社インフィールドが運営するこのフロアは、貸会議室以外にもVIP用控室や映画・ドラマの撮影などの用途で利用が可能です。クロスの一部には正倉院宝物殿にある銀壺と類似した織物クロスが施され、歴史的価値の高い空間となっています。

敷地内のケヤキをつかった机
漆喰壁の裏側から見つかった織物クロス

保存棟内のクラシックオフィスは、コンパクトなオフィスフロアで、広さは会議室を含めて24坪(15席)~42坪(30席)ほどですが、白壁かつ直天井のため開放感があります。

クラシックな雰囲気を残しつつもビルスペックは最新鋭

せり出し舞台のある宴会場「真珠の間」は、フローリングやシャンデリア、丸窓は創建時の意匠を復原し、可動式照明で自由度の高い演出もできます。
天井高は7mを超え、現代のカンファレンスシーンとは一味違った雰囲気を味わえます。

旧九段会館時代の豪華絢爛な雰囲気が漂います

新築部分、オフィスフロア、屋上庭園

新築部分のオフィスの広さは約2,500平米(約756坪)と広々。
西側の開口からはお濠と武道館ビューが広がります。

天井が高く解放感のあるオフィススペース

5階の屋上庭園はオフィスワーカーゾーンと一般来館者ゾーンに分かれており、日常のくつろぎの場として利用できます。
ワーカーゾーンはウェルネスガーデンとして活用してもらえるよう、腹筋や足の筋肉を鍛えられる椅子など健康増進を考慮した家具が設置されています。

その屋上庭園で一際目を引くのが深い緑色の屋根瓦。これらは「瀬戸瓦」と呼ばれ、すでに製造技術は途絶えていましたが、日本三大瓦産地である三州(三河の別名)の職人の手で復原されました。新たに製造された2,200枚(全体の13%)は現存する瓦と色あいを合わせるため、あえて古い窯で焼くなど試行錯誤が重ねられたそうです。

塔屋の屋根に並ぶ新緑の「瀬戸瓦」

地域に開けたウェルビーイングなフロアをご案内!

“地域に開けたウェルビーイングな次世代オフィス”として新しい働き方とライフスタイルを創出するため、地域食堂を併設したビジネスエアポートやクリニックモールのほか、九段坂から隣接する高齢者総合サポートセンター「かがやきプラザ」をつなぐ歩行者ネットワークを整備しています。

ビジネスエアポート九段下の重厚感のあるラウンジ

エントランス正面の「九段ひろば」には緑地やベンチなど、都心オフィスビルながら地域住民の人々との交流を生み出す仕掛けがさまざま施されています。
九段ひろばからつながるお濠沿いには、一般歩行者用のデッキ通路「お濠沿いテラス」、そしてその先には「九段こみち」がつづき、昭和館やかがやきプラザなど周辺エリアの回遊性を高めています。

お堀を眺めながらのお散歩に

「新旧融合」と「環境と健康」を実現したプロジェクトを終えて

もともと九段周辺は利便性が高いにも関わらず、これまで大型オフィスビルといえば北の丸スクエアくらいしかありませんでした。そこに、新旧の技術を融合し地域のシンボルとなる九段会館テラスができたことはとても意義深いですし、オフィス街としてのこの地域の新たな需要を喚起することにもつながると考えられます。
そうした案件で環境先進企業を目指す取り組みを進め、多くの方々にその試みと当社の姿勢を知っていただけることに大きなやりがいを感じます。
これからも、新たな案件に日々チャレンジしていきたいと考えています。

  • 8 働きがいも経済成長も
  • 11 住み続けられる まちづくりを
  • 12 つくる責任 つかう責任
  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。