京町家の伝統をつなぐ「nol kyoto sanjo」で、
暮らすように過ごす
課題を解決するまちづくりプロジェクトノート
DATE 2024.05.31
京都市の中心街・烏丸御池にある、東急不動産が開発、東急リゾーツ&ステイが運営を手掛ける「nol kyoto sanjo(ノル キョウト サンジョウ)」。京都市中京区で創業した日本酒造「キンシ正宗」の販売所としてかつて使われていた伝統ある京町家を改修した、情緒あふれるホテルです。現状、老朽化した町家は壊されてビルに建て替えられることが多く、年々数が減少しています。そういった面でこのプロジェクトは、伝統的な街並みを残すという文化的側面、実用性やサステナブルな暮らしを提案の両方にアプローチする取り組みとなりました。
今回は、東急不動産の担当者から「京を纏い、三条に暮らす」がコンセプトの館内をご案内いたします。
PROFILE
角田 茉帆
東急不動産 ウェルネス事業ユニット
ホテル・リゾート事業本部 ホテル企画部
100年前の酒造の趣がそのままnol kyoto sanjo
かつて日本酒造「キンシ正宗」の販売所として使われてきた、築100年ちかくの京町家を改修した当ホテル。町家が少なくなっているのに加え、日本酒も若者離れで苦しい状況となっているなかで、町家文化、日本酒文化の両方を解決する糸口になればと思い、プロジェクトが始動しました。
町家の趣きを残すため、町家改修の第一人者である建築家、魚谷繁礼さんにデザイン・設計を依頼。奥の居室部分は新築ですが、表側のエントランスやラウンジとなっている部分は町家をそっくり活用した落ち着いた空間となっています。
当時使われていた「キンシ正宗」の商号看板がそのまま残された情緒あふれる外観で、「何のお店だろう?」と覗き込んでいる方もいらっしゃいます。
あたたかな町家の風情を感じられる「ラウンジ」
入口を入って左手には、nol kyoto sanjoの特徴である宿泊者専用の町家ラウンジがあります。全体的にシックな色合いで落ち着いた雰囲気に包まれており、「Kyoto Vintage」というデザインコンセプトを実感できます。
天井を見上げると銅板が。照明で直接ではなく、銅板に反射させることで強すぎずやわらかい明るさで室内を照らしています。この照明は、数々の名ホテルの照明デザインを⼿掛けてきた⽥中圭吾さんによるもので、“⽇本の伝統的な光のあり⽅を現代的に再構築”をコンセプトに、京都で⼤切にされている陰影を表現しています。
この町家ラウンジでは、ウェルカムドリンクとして「キンシ正宗」の日本酒をサーバーから試飲することができます。純米大吟醸酒、純米吟醸酒、特別純米酒などの清酒だけでなく、ワイン酵母で醸造した特別純米酒 BONITA(ボニータ)などたくさんのお酒がずらり。
京都発祥のコーヒーブランド「Unir(ウニール)」の「スペシャルティコーヒー」や、1864年創業の老舗「伊藤軒」の京菓子、ソフトドリンクも楽しむことができ、お酒の苦手な方やファミリーでもゆっくりとおくつろぎいただけます。
さらに奥に進みトンネルのような路地を抜けると、客室棟1階の象徴的な坪庭があります。この客室棟は5階建てで坪庭の上が吹き抜けのため、天気や季節によってさまざまな趣の坪庭を鑑賞することができます。
左手の壁は木製のように見えますが、実はコンクリート!職人が木の板で跡をつけ、木目調を表現しています。
全室ヒバ風呂付き!京町家で暮らすように過ごせる客室
客室棟は5階建て・全48室3タイプの客室があり、各客室には中長期滞在型ホテル「東急ステイ」と同様に電子レンジや洗濯乾燥機、一部客室にはミニキッチンを設けています。
京都ならではの食料品がそろう「錦市場」で買ってきた食材を客室で調理することもでき、まさに「暮らすように過ごす」ことができる空間となっています。
さらに、全室ヒバ風呂付き。京都観光は寺院巡りや紅葉狩りなど街歩きをすることが多いため、ゆっくりお風呂でくつろいでいただくために水回りを広めにとっています。
町家ラウンジの日本酒を部屋に持ち込んだり、フロントで地ビールセットなどお酒とおつまみのセットを購入したりすることもできるので、お風呂上りに一杯…というのもおすすめです。
朝は舞妓さん御用達名店の味をお届け
朝食は和食・洋食をそれぞれ「仕出し」にてご用意しており、事前に予約しておけば朝客室までお届けします。
洋食は歌舞伎役者や舞妓さん御用達の老舗喫茶「コーヒーショップナカタニ」看板メニューである「たまごサンド」も含めたサンドウィッチ、和食は“おばんざいが絶品&可愛すぎる”と有名な「京菜味のむら」の12種おばんざいが用意されており、どちらか好きな方を選べます。
チェックアウトは12時。
三条にはモーニングの有名な喫茶店や地元の食材を使った飲食店など、この土地ならではのお店が多く、朝ご飯を外に食べに行っても、戻ってきてゆっくり荷造りしていただけます。
今後も京都やホテルでの時間を楽しんでいただけるよう、料亭とコラボレーション、京の料理と、芸妓・舞妓の文化を体験してもらう企画も予定しています。
プロジェクトを終えて
年々減少している町家を残し、何とか活用できないか、そうしたことからこのホテルの企画が持ち上がりました。古い建築物を改修して使おうとしても、建築基準法上の制約があります。そうした制約をクリアするために、古い建物を活かしてきた建築家の方に企画段階から参加してもらいました。
中長期滞在のホテルとして東急ステイの高い滞在性を継承しつつ、観光により特化し新たな価値を付加すること、更に新旧の文化が混在するこの京都三条という場所で、歴史ある町家を活かした計画を進めることは、緊張感がある一方担当させていただける喜びが大きかったです。
現在、総支配人を中心としたスタッフの方々の元で、幅広い層のお客様にお越しいただいておりますが、今後もnolファンが更に増え、何度も来たいと思ってもらえるようなホテルに、町家と共に熟成させていっていただけたらと心から願っております。
東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。