「伝統工芸」で旅人に飛騨高山の魅力を発信するホテル

東急不動産が描く環境先進ストーリー

DATE 2024.05.31

  • #サステナビリティ
  • #SDGs
  • #地域連携
  • #新しい過ごし方

岐阜県高山市のJR高山駅東口を出て右側に建ち、東急不動産が開発、東急リゾーツ&ステイが運営を手掛ける「東急ステイ飛騨高山 結(むすび)の湯」。
東急ステイは1993年に1店舗目が開業以来、都心を中心に都市部に展開してきたが、このホテルは観光型の“新・東急ステイ”。「旅人と飛騨高山がつながるホテル」をコンセプトとし、「工房プロジェクト」と題して飛騨地区の伝統工芸をふんだんに取り入れており、飛騨地域の魅力に直接触れることができるのが特徴です。自然の素材を活かした伝統工芸を大切にすることは、豊かな自然や文化の継承にもつながっています。

伝統的な街並みと調和した高山らしい建物

江戸時代に城下町として栄えていた頃の景観が、ほぼそのままの姿で残されている飛騨高山。建物は「古い町並」に合わせて、高山らしさを感じさせる黒い木材や庇がデザインされ、上層階は落ち着いた色味で統一されています。全体として高山駅前に華やぎをもたらしつつ、伝統的な街並みや周辺の自然景観とよく調和した建物となっており、令和2年度高山市景観デザイン賞で建築物の部優秀賞を受賞しました。
1階の共用ラウンジに設置された大きなテーブルと上からつられた組紐は、炎が揺らいでいる囲炉裏のような落ち着いた空間で、周囲には飛騨を象徴する「飛騨春慶」という漆塗りがアクセントに使われた大小のたくさんの木工格子が組まれています。

高山の街並みと調和するよう作られた外観

触れて伝統工芸の魅力を実感できるギャラリー

「工房プロジェクト」として3階から8階の各階エレベーターホール近くには飛騨地域の工芸ギャラリーを設置。そこでは、「飛騨木工」(3階)、「飛騨牛革」(4階)、「飛騨さしこ」(5階)、「飛騨春慶(漆塗り)」(6階)、「渋草焼(陶磁器)」(7階)、「山中和紙」(8階)がそれぞれ紹介されています。ただ工芸品そのものを展示するのではなく、工芸を活かした『椅子』としてデザインし、宿泊客が触ったり座ったりすることで、工芸や素材が持つ魅力そのものに直接触れられる仕組みになっています。

3F 飛騨木工のスケールを感じられるギャラリー
6F 飛騨木工と春慶塗がコラボしたギャラリー
7F 茶室をイメージした渋草焼のギャラリー
8F 雪に晒して製作される山中和紙のギャラリー

宿泊客が地元工芸に触れるタッチポイントとして、ホテルスタッフの胸元には飛騨高山伝統の渋草焼のバッジが。他にも、客室のテレビには伝統工芸を紹介する動画が流れ、ホテルに入るとすぐに、工芸にまつわるストーリーが始まります。客室の椅子や館内のピクトグラムは飛騨木工、室内に設置されたリモコントレイには飛騨牛革、壁に掛けられたアートワークには飛騨さしこ、アラーム時計には飛騨春慶、インフォーメーションブックには山中和紙が使われています。

(左)山中和紙のインフォーメーションブック(中央)飛騨牛革のリモコントレイ(右)飛騨春慶のアラーム時計

気に入った工芸品は1階ショップで購入でき、観光として工房を訪ねることもできます。このホテルに宿泊したことがきっかけとなり、宿泊客と地域の人がつながることも狙いの一つです。

飛騨木工の格子があしらわれた1Fのアンテナショップ
“飛騨さしこ”のトートバッグなど伝統工芸品も販売

「旅人と飛騨高山がつながる」仕掛けの裏には

宿泊客がホテル内で発見した飛騨高山の魅力を体験しにホテル外へ足を運び、その土産話を周りに話していただくことで次の旅客へつなげることが、ホテル集客のみならず地域発展にも貢献することができると考えています。ただ、他のホテルとの差別化や魅力付けを当社だけで企画するのは難しく、現地のパートナー会社の協力が必須でした。現地に足を運びながら、30以上の工房を含めて地域の方々とコミュニケーションをしっかり取ることで、この「工房プロジェクト」は実現しました。
工芸ギャラリーの他にも客室や共用部の家具には、飛騨地域の4大家具メーカーの家具を取り入れ、飛騨木工と宿泊客をつなぐきっかけをつくることができました。

飛騨高山の組紐「くみひだ」のアートワーク
飛騨木工と春慶塗のテーブル&チェア

伝統工芸品の継承が環境配慮に

最上階の9階には、高山の街や飛騨の山並みを一望できる展望ラウンジや足湯のほか、別荘感覚で利用できる会員制リゾートホテル「東急ハーヴェストクラブ飛騨高山」が併設されています。ハーヴェストクラブの客室には、これまでご紹介してきた工芸品のほかにも、飛騨高山の組紐「くみひだ」のアートワークや、飛騨木工のテーブル&チェアなどが設置され、東急ステイの客室とは異なる宿泊体験が可能です。

このホテルに泊まるだけで、工芸品の新たな魅力を発見することができ、使ってみたいと思わせられる。その仕掛けが、伝統工芸の活性化、地域の活性化にもつながります。そして、工芸品の多くは、自然の素材から作られ、長い歴史の中で人々の生活に溶け込んでおり、伝統工芸品そのものがサステナブルな日用品といえます。

東急ハーヴェストクラブの客室
地域を一望できる9Fラウンジ

プロジェクトを終えて

開業後は、お客様が各階のギャラリーで工芸品の椅子に座って撮影し、その写真をSNSに掲載したり、実際に工房店舗に足を運んだりしていただき、「旅人と飛騨高山をつなぐホテル」というテーマがお客様に伝わっていることを実感できています。
また開発段階から工房のみならず、さまざまな地域関係者との連携を深め、伝統工芸自体の新しい可能性や魅せ方を実現できたことで、最終的には地元の方からも「泊まるなら絶対このホテル!」として紹介していただけるようになりました。

現在、幅広い層のお客様にお越しいただいておりますが、今後は地域とコラボした工房体験ツアーや、駅前立地を生かした「地域のアンテナショップ」、「ショールーム」として、持続的な地域発展の実現を目指していきます。

  • 8 働きがいも経済成長も
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  • 17 パートナーシップで目標を達成しよう

東急不動産ホールディングスグループは、2015年に国連サミットで採択された2030年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献しています。持続可能な世界を実現するための17の目標のうち、取り組む項目を定め、SDGsを起点にサステナブルな社会と成長をめざします。本プロジェクトにおいては、上記の目標の達成に寄与するものと考えます。